11月30日 教育委員会との話し合い
旭丘高校改修計画 中村享一 案プレゼンテーション原稿

下記は再生案(中村享一案)に関するプレゼンテーション原稿です。
プレゼンテーション画像(ここ)を見ながら原稿を見ていただくとわかりやすいです。


旭丘高校再生計画プレゼンテ−ション                                     2000年11月30日

本日はプレゼンテーションの機会を与えていただいたことを感謝いたします。計画を具体的に行ないながら設定条件が大変厳しい状況であることを痛感しました。ただこの建築のすばらしさも感じることができました。学校は教育の場であることはもちろんですが、公共建築としての使命や役割も併せ持っています。阪神大震災の時に重要な役割を果たしたことは記憶に新しいことと思います。地域との関係も大切に計画する必要があります。時代は大きな変換点を迎えています。そのような時代に教育が果たす役割は大変重要です。特に環境教育は若い時代に体験を通じて身に付ける必要があると考えます。

まず計画目標設定について
21世紀にふさわしい高校の計画を始めるにあたりいくつかの目標を設定しました。
1.環境問題に配慮した計画を行ない学校教育の現場で実践教育を行なうこと。
2.阪神大震災クラスの地震に耐えるように補強を行なうこと。
  また、震災などの災害時に防災の拠点施設となるように改造すること。
3.高速通信及びコンピューターなどのインテリジェント機能を整備すること。
4.学校の特色をアピールしたり、地域に開かれた学校施設とすること。

次に計画諸条件について
必要諸室の構成は教育委員会が作成した基本設計図書に記載されている面積を参考にしました。
工期も前回の話し合いの時提示されていました予定の工期内で行なえるような計画に致しました。
又議会承認されている予算内での提案を行なってくださいということでしたので、そのような内容に基づいて計画を行なってきました。
本計画の目標の設定に基づきギャラリー、サーバー室、インターネットロビーなどの諸室を新たに追加しました。また、設備においても温水器、太陽光発電設備、散水設備、エレベーターなどの充実を図りました。

計画概要について
学校本体の4階部分を解体撤去し新たに地下部分に音楽室と工作室と視聴覚教室とコンピューターサーバー室設置します。体育館と教室棟の間の中庭部分に回廊及び小規模の2層の建築物、エントランスロビーとキオスクを増築します。運動場に面した二階部分には特別教室とインターネットロビーを設置します。正門の直ぐ横にギャラリー及び作法室の2階建てを新築します。
運動場の2百メートルトラックや野球場、テニスコートの配置は教育委員会作成の案とほぼ同じ配置です。

工事部分と面積について(画面を指し示す)
新築部分280平方メートル・地上増築部分1800平方メートル・地下増築部分782平方メートル・補強改修部分4963平方メートルの計画を致しました。7825平方の改修工事を行ないます。

建設内容及び工法、工期について説明致します。
まず、現建物の4階建部分を解体撤去します。その部分は、戦後の増築をされた部分ですがもともとその部分は初期の計画にはもり込まれてなく教室を確保する為に構造的に、かなりの無理をして増築をされていました。長期の耐久には多少無理があったように思われます。又、4階部を撤去することによって、建物の耐震構造性能は上がります。
もともとこの建物は、非常時の拠点施設として使用できる構造性能を賦与する能力が計画されていました。通常の建物の倍はあった(建築再生デザイン会議メンバー 京都大学、西澤英和先生談)ということだそうです。
4階部分の解体工事と同時に、地下部分の連続壁やソイルパイルの工事に着手します。通常地下部分の工事は学校建築では、コスト・工期の問題があり採用されにくいのですが、今計画の場合、床面積の確保・運動場の有効活用のことを考慮し計画しました。特別教室のうち地下室においても設置可能な音楽室・工作室・視聴覚教室・コンピューターサーバー室を設けました。工期の問題を解決するのに連続壁という工法を採用します。隣接の本体校舎への影響は最低限にとめることが出来ます。簡単に工法の説明をいたします。重機で巾70cm、深さ6.5mの溝状のものを掘り、平面としては10m×72mの非常に大きい井戸みたいなコンクリート壁をつくります。中にはもちろん鉄筋を入れ最終的には地下部分の構造壁として利用します。
地下壁が完成すると内部の土を掘削し、底板まで堀り、基礎の工事を行ない、躯体を完成させます。あとは地上部分の工事に似たような工程で進むことが可能です。
この工法を採用することによって、平成14年の新学期に間に合わせることが可能であると考えております。地下躯体と同時に増築・新築工事を始めます。地上部分は鉄骨造一部コンクリート造で、地上3階・ペントハウス1階の規模です。工期は9ヶ月で十分と考えています。

ゾーニング及びプランについて
本体校舎の3階は普通教室16教室及び美術部のアトリエを配置します。
2階は普通教室14教室の他に特別教室が配置されます。南面する運動場側にはインターネットラウンジと多目的教室、書道室を計画しています。運動場を見ながらリラックスできるような環境を計画しました。
体育館側の中庭にはコンピュター室や相談室を配置しました、中庭の落ち着いた環境の中で学習ができる環境を計画しました。1階は物理や化学、地学などの特別教室として利用します、社会科教室は建設当初大変めずらしかった階段教室の原型を再現して旭丘高校の歴史や文化に触れる事が出来るようにしたいと考えています。中庭部にはキオスクや相談室、職員の休憩室などを一戸建ての感じで配置しました。また、中庭に面してガラス張りのロビーを設け明るい雰囲気のある空間にしたいと考えています。校長室は現状の位置に残します。職員室は部屋の広さを拡張し基準値の面積に近づけます。玄関の北側部分は地震などの災害時地域の防災拠点となれるような機能を附加します。医務室、放送室、会議室は日常的には高校の施設として使用しますが、非常時は学校に設置されている高速通信施設や非常電源設備、太陽熱温水器などを使用し地域の防災拠点施設として利用可能なのもにしたいと考えております。正門の横に旭丘高校の特色でもある美術活動の発表を日常的に行なえるギャラリーを設置します、2階部分には作法室を設置します。玄関北側一階部分とギャラリーを地域との交流のゾーンとして位置付け、開かれた高校にして頂きたいと考えました。
地下部分について、音楽室や工作室、視聴覚教室などの遮蔽性の必要な諸室と温度環境が一定の条件が必要になってくるようなサーバールームを地下に配置しました。快適な環境を確保するためにトップサイドライトにより自然光を多く取り入れる計画としました。

環境教育の為の設備について
21世紀は地球環境問題が重要な課題となります。循環社会の構築が重要なテーマです。
ゴミの問題、エネルギーの問題など解決しないとならない課題が山積です。今から様々な学習を行い社会に出て行く高校生にとっても何のために学習をするのかを問う重要な問題だと思います。
建築の中にあって有効な解決方法の幾つかを計画のなかに取り入れ、体験学習できる施設に計画をします。環境先進国のドイツではあたりまえになっている屋上緑化(これは夏場の最上階の熱気を防ぐのに効果的です)、また太陽熱を利用した太陽光発電、温水器などを設置し日常の生活の中で利用します。液晶画面のモバイルコンピューターはこれらの自家発電源でかなり使用することが可能ですし、これらの設備は災害時においても大変有効です。

インテリジェント機能について
教育環境のなかでコンピューターとか高速通信をどのように利用するか、利用の為の学習をするかは重要な問題となっています。建築物が古くLANなどの環境が整い難いとかの指摘がなされていますが、もともとこの校舎は床が根太組みされているのでフリーフロア-にも改造し易い構造となっています。学校内はLANケーブルと無線LANの組み合わせにより十分整備が可能です。また、サーバーを校内に設置することで教育の現場、美術アート世界、そして災害時の地域データ-管理など多様な可能性も出てきます。また、現在高速通信の技術は加速度的に進んでいます。ネットワークを整備することによって情報量が豊富になります。学校のように同時に多人数がインターネットの環境を用意する必要がある施設においては21世紀の教育環境現場の重要な課題となりますので、PTPやサーバー また、構内LANの計画も盛り込みます。


快適な生活環境のために
機能だけでなく、快適な教育環境を整備する必要があります。旭丘高校の卒業生が開いているホームページの中に学生側からの多くの参考となる意見がありました。特に女子用トイレの増設は重要な課題ですし、窓の開閉の不自由さ、夏場の遮熱の問題等、現状の旭丘高校は多くの問題を抱えています。
ただ、このような問題は改修の工事で十分に解決可能です。ただホームページの建替え賛成者の中には、LAN環境に問題有りとか、危険建物であるとか誤認識されて、建替えの意見を主張されている方も多くみられました。

今回提出しました当計画は短時間の中で検討しました、又現地での調査も十分ではありません。
さらに検討を重ねなければならない部分もありますし、教育委員会及び学校関係者、また地域の方々の意見もお聞きする必要もあろうかと思います。しかし、11月中に検討資料を提出しないと議会で検討していただけそうに無い状況であると説明を受けましたので不十分な計画ではございますが、計画を提出いたしました。さらに基本設計の時間を用意していただき検討を深めていくことが好ましいと考えております。
工事費及び工期について建築再生デザイン会議のメンバーである荒巻氏と相談を行いながら進めてきました。計画上の問題点を指摘して頂き、再生または建替えを巡る会議の資料として頂きたいと思います。

本日提案しました内容は先日の会議の際資料を提出致しました建築再生デザイン会議レポート、及び阪神大震災後に提出された将来の建築、都市のあり方に関する建築家協会の提言(委員長池田武邦)、文部省のホームページ、旭丘高校卒業生が開いているホームページ等を参考にしながらまとめを行ないました。教育委員会からは旭丘高校校舎改築基本設計、同校舎等取り壊し工事図面、及び設計書等の資料を提示頂いたことに感謝を致します。

建築再生デザイン会議
計画担当 中村享一
技術工法担当 荒巻利男
情報技術担当 岡田昌治