建築再生デザイン会議
Architectural Regenaration Design Conference

建築再生デザイン会議
 
趣意文


今日までにこの世に多くの建築が生み出され、そして同時に多くの建築が役目を終えて取り壊されていきました。私たちは文化のさらなる発展を夢見て建築をつくり、その喜びの中で、ある時は盛大に、またある時はつつましくとも、しかし例外無くその誕生を祝います。それに引きかえ建築が解体される場面ではどうでしょう。ほとんどの場合突如として幕が下ろされ、見る間に鉄球に打ち砕かれ、粉々になって運び去られてしまいます。中には寿命を全うしたものもあり、中にはまだまだ躯体は壮健ながら、時代の機能的な要請に沿うことができずに使命を終えるものもあります。華やかな竣工式にくらべると、ずいぶんと寂しくまた廃棄物を扱うような冷たさです。年輪を重ねた建築の嘆きが聞こえてきませんか?私たちの建築技術は、いかにすばらしい建築を作り上げるかを、もっぱらこれまでの目標として発展してきました。長い建築学の歴史も、建築を生み出すことに関しては実に多くの成果を残してきたといえます。建築のデザインも、空間にいかなる形を与えるかに力を注いできましたが、一度建った建築の寿命が尽きたとき、どのようにして姿を消していったらよいのかについては、あるいは長く人々の心にとどめるためにどのように保存したらいいのかについては、ほとんど考えられていなかったと思います。取り壊しが決まればできるだけ短時間に解体し、すみやかに更地に戻して次の建物を建てる、これがもっとも効率良く土地を活用する方法だと考えられています。名建築を巡る保存の論議も、しばしば保存か撤去かの二極化した意見の衝突になってしまいます。さもなくば古い建築の断片を切りとって新しい建物の装飾とするような、先祖の忘れ形見のような保存に落ち着いてしまう場合も多いのです。 ゆっくりと自然に最後まで燃焼していくような、そんな建築の終わり方はできないものでしょうか。とくに多くの人々に親しまれ愛されてきた建築には、それに相応しい保存の仕方が考えられないものでしょうか。突然廃棄される物となって、ある日忽然と姿を消すのではなく、次第に新しい建築に置き換わっていくような斬新な建替えのデザインは不可能でしょうか。私たちには建築をいかに壊すのか、いかに取り替えるのか、そしていかに残すのかという、まだまだ未着手の研究テーマが残されているように思います。 時代は急速で劇的な発展ではなく、ながく持続可能な発展を追究するよう求めています。単に建築の廃棄物を減らし、部材の再利用化を図るといった次元にとどまらず、より深く建築や都市の保存と更新に関わる主題を考察し、専門家、市民、行政の垣根を超えた議論を喚起し、これからの新しい建築の文化を切り拓くための建築再生デザイン会議の設立を提案します。

2000年2月2日
建築再生デザイン会議発起人一同 代表 池田武邦


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